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山下泰裕著『背負い続ける力』

背負い続ける力 (新潮新書)

山下 泰裕 / 新潮社



本書は神奈川新聞に掲載された「わが人生」(2011年1月1日〜2月28日)に、大幅な加筆・修正を加えたものです。
と巻末にあり、発行年月は東日本大震災(本書「はじめに」で触れている)を挟んで1年以上経ての2012年4月である。

生い立ちや、これまでの歩み等バックグラウンド等いろいろと知ることが出来たが、今年もよく話題に上っている本来の柔道、柔道の教育的側面などに関わる箇所を引用したい。018.gif

 柔道ルネッサンスの理念や取り組みを柔道関係者以外の方にお話しすると「さすが柔道だね。すごいね。立派だね」という反応が返ってくることが多い。
 しかし、私はそう思っていない。柔道ルネッサンスのような運動をやらなければいけないことに問題があるのだ。こういうことは本来、上から押し付けられてやることではない。われわれ一人ひとりが柔道の心と嘉納師範の教えをよく理解し、自ら率先して行動し、子どもや若者に教えていくものではないだろうか。こうした反省の心をもってこの活動に取り組んできた。
 柔道ルネッサンスの活動は、二〇一一年のの春で丸一〇年が経過した。講道館、全日本柔道連盟では、一〇年を一区切りとして、特別委員会としての柔道ルネッサンス委員会を解散することになった。
 もちろん、だからといって活動そのものが終わったわけではない。
 柔道ルネッサンスの精神、役割、メンバーを既存の委員会や各都道府県柔道連盟といった現場に落とし込んで継続していくことになっている。すべての柔道関係者が、熱い心を持って取り組んでいくことを期待したい。
〜p.140-141,「第四章 柔道を背負う」








上の引用部より前の箇所から…

「人づくり」という原点に
そもそも、柔道界はなぜこれほど乱れてしまったのだろうか。
柔道が東京オリンピックで正式種目に採用されて以来、日本柔道はオリンピックで国民を満足させられなかった。その理由は、世界中に柔道が普及したことだ。国際的なスポーツとして柔道が盛んになればなるほど、日本人が勝つのは難しくなる。当然とも言える結果だが、国民の期待はさらに高まるばかりだった。期待が過度の重圧となり、選手も指導者も金メダルを取ることしか頭になくなる。日本柔道では、勝負に関係ないことが軽視されるようになってしまった。
〜〜<中略>〜〜
 柔道人のマナー改善を訴え続けても、すぐに柔道界全体の問題として取り上げてもらえたわけではない。状況にさほど変化は見られなかった。そこへ強い追い風が吹く。二〇〇一年になって間もないころのことだ。
 正月に行われた講道館の鏡開き式で、嘉納行光館長(現・名誉館長)が口にした言葉をいまでも鮮明に覚えている。
「二一世紀、われわれ日本柔道界が目指していくのは、柔道を通した人づくり、人間教育である」
 嘉納館長の言葉を受けて、中村良三先生(元国際柔道連盟教育コーチング理事)があるプロジェクトの立ち上げを提唱した。それが「柔道ルネッサンス」である。
 柔道ルネッサンスとは何か。設立趣意書にはこう書かれている。
「(嘉納治五郎)師範は競技としての柔道を積極的に奨励する一方、人間の道としての理想を掲げ、修行を通してその理想の実現を図れ、と生涯を懸けて説かれました。講道館・全日本柔道連盟は、競技としての柔道の発展に努力を傾けることは勿論、ここに改めて師範の理想に思いを致し、ややもすると勝ち負けのみに拘泥しがちな昨今の柔道の在り方を憂慮し、師範の理想とした人間教育を目指して、合同プロジェクト『柔道ルネッサンス』を立ち上げます。その主目的は、組織的な人づくり・ボランティア活動の実施であり、本活動を通して、柔道のより総合的普及発展を図ろうとするものです」
 正しく挨拶ができるようにすること、逆境に負けない強い心を育むこと、相手を思いやる優しさを備えること。柔道ルネッサンスとは、柔道が持つ本来の精神をしっかり伝えていけるような環境を作る活動である。
 子どもたちや母親からすれば、おそらく野球やサッカーのほうが格好良く見えるだろう。しかし、柔道をやっている人はどこか違うと感じてもらえれば、わが子にもそうなってほしいと願う母親も増えていくのではないか。世の中の母親がわが子に柔道をさせたいと思ってくれるような柔道界になり、それによって子どもたちが柔道を始めてくれればこの上なく幸せなことだと思う。
〜p.132-135, 「第四章 柔道を背負う」



本文最後締めの部分…

 競技スポーツと生涯スポーツを分断してはいけない。
 生涯スポーツを推進しようとするとき、各競技団体がその気にならない限り大きな進展は望めない。国民のスポーツに対する関心、理解を求めるうえでオリンピックが重要な位置を占めることも忘れてはならない。オリンピックで金メダルを取ることと、生涯スポーツによって国民の心身の健康を取り戻すことはセットになっている。
 感動は心の栄養になる。いま日本人に必要なのは、体の栄養ではない。
 スポーツから生じる感動が、日本人の心の豊かさに直結する。これからのスポーツはそういう存在であってほしい。そのためにもスポーツ省が必要だ。これは競技スポーツを強化することだけの目的ではなく、明るく活力ある日本と、芯の強い日本人の復活のために必要なのである。





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Kindle版も出ていた…

背負い続ける力(新潮新書)

山下泰裕 / 新潮社


by lisaloeb0401 | 2013-09-29 15:23 | 読 書

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